「脳腸相関」という言葉があります。これは、脳と腸が双方向に影響を及ぼし合う関係にあることを示す言葉です。そして、近年、「脳腸相関」が存在することは科学的にある程度証明されてきているそうです。
脳腸相関が存在するとすれば、脳(心)の状態が良くなれば腸の調子が良くなり、腸の調子が良いと脳(心)の状態が上向くということになります。過敏性腸症候群の症状も腸脳相関で説明できます。つまり、ストレスがあるので腸の調子が悪くなり下痢や便秘になり、下痢や便秘ゆえにストレスを感じ、また症状が悪化するという悪循環に陥ってしまっているということです。
ただ、人間が脳腸相関(特に脳→腸)に気づいたのは、科学が進歩した現代ではなくかなり昔のようです。心の状態を「腹」や「腸」という言葉を用いて表現する慣用句がたくさんあることからそのことがわかります。
例えば、日本語では以下のような表現があります。
・腹を立てる=怒る
・腹黒い=心に悪だくみがある
・腹を決める=決心する
・腹に落ちる=納得する
・腹が据わる=度胸がある
・腸(はらわた)が煮えくり返る=激しく怒る
・断腸の思い=とてもつらく悲しい思い
また、古代ギリシャの医師であるヒポクラテス(西暦前5世紀頃)は「すべての病は腸から始まる」と述べたそうです。科学的なデータはなかったでしょうが、彼も腸はかなりの程度脳に影響を与えることに気づいていたと思われます。
さらに、聖書にも、人の感情を「腸」で表現している箇所が結構あるそうです。例えば、エレミヤ書4章19節の記述(西暦前6世紀頃)では、預言者エレミヤがユダ王国の滅亡がするという神様の裁きを聞かされた時の気持ちを「私の腸よ、私の腸よ、私は苦しみにもだえる」と表現しています。
このように、脳と腸には深い関係があるということに、人々は昔から気づていていました。それを今、科学的に解明しようとしているわけです。その研究がもっと進めば、いずれ過敏性腸症候群の特効薬や劇的な改善方法が世に出されるかもしれません。
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